映画『シン・ゴジラ』を観終えて/これは徹底的に「怪獣」映画でした
前置き
六本木のMX4Dで、映画『シン・ゴジラ』を観てきました。
思わずこのブログ記事を書かせるほどに圧巻で最高でした。
まずはじめに、書き手たるピュシスの属性というか背景というかを列挙しておきます。
- 小学生の頃、毎年映画館で平成ゴジラを観ていた世代
- レンタルビデオで昭和ゴジラは制覇した
- 小学生の頃は退屈だと思っていた初代ゴジラが今ではすごく良い映画だと思っている
- 90年代のTV版・映画版エヴァはリアルタイムで観たし劇場に足を運んだけれど好きではない
- 00年代のヱヴァは序・破までBlu-rayで観た、こちらの方が90年代版より好き
- スーパーロボット大戦に出てくるエヴァは割と好き
- 庵野監督に特段の思い入れはない(マクロスなどではスゴイと思っている)
- 仕事をしていて、今の自分のしている仕事一種の誇りも持っています
こういうピュシスが、MX4Dという体感型劇場で映画『シン・ゴジラ』を観るとどうなるか。
絶句。
絶句するしかなかった。
ようやく脳が感情や思考を言語化できるに至ってくるのに2時間くらいかかったかもしれません。
ネタバレは避けつつ、この映画について考えさせられた(考えたのではない、考えさせられたのだ、考えざるを得なかったのだ)点についていくつか挙げておきます。
原点に立ち返るものとしての『シン・ゴジラ』
シンというのは、恐らくトリプルミーニング以上の重ねがあって、そこに深く言及するとネタバレになりそうなので避けますが(これ自体が或る種のネタバレか)この2016年という時に、「新たに」また最初の哲学をもとにゴジラをやってみたら、こうなりました、というのが本作の基礎だと思います。
それだけあって、初代ゴジラの訴えてきたことは、全て包含されています。
風刺あり、警鐘あり、そしてヒトはそれでもそれらを乗り越えていけるという応援あり。
この点をカンペキに、2016年の今にやるべきこととしてやってのけているだけでも、すごいです。
が、それだけではない。
ゴジラが怖いのです。
徹底的に怪獣映画
本作は、パニック映画であり災害映画であり、何より怪獣映画であります。
基本構図は、突如として出現した怪獣に対抗すべく試行錯誤を繰り返した挙げ句に何とか倒してエンディング、という「王道」そのものです。
ただ、この「王道」をやりきりつつ、これまでのゴジラ映画を布石にしたメタ的な仕掛けがある。
過去の『ゴジラ対~』を観て育ってきた人からすると、恐らく、ゴジラに対して一種のそして一定のヒーロー感を持っているのではないでしょうか、少なくともピュシスにはそれがあります。
だから、本作において、自衛隊から攻撃されるゴジラの姿を見て、自衛隊ではなくゴジラを応援してしまう自分がいることにも、観ている最中に気付かされました。
いわゆるダークヒーローではないし、いわゆる人間的な価値判断における正義も悪も何もない怪獣に対して「ひねくれた感情なくごくごく素直に応援してしまう」観衆がいる、というのがメタ的な装置として構造上はたらくこと必至で、ここまで計算され尽くして作られているのだろうな、と思うと側頭部を打つしかありません。
それに加えて、先述した通り、そういうヒーロー的にゴジラを見てしまう人間にとっても、とてつもない怖さを感じさせてくる。
過去、これほどまでに怖いゴジラ映画は、ありませんでした(あるいはそれは、MX4Dという体感装置の効果もあるはずですが)
これらの意味において、この映画自体が比喩的な言い方で「怪獣」映画だと思いました。
スピンオフ/二次創作の可能性
とにかく一瞬たりとも安心して観ていられないこの作品は、最初から最後まで高速で駆け抜けていきます。
会議場面が退屈……という意見もあるようですが、もしかしたらああいった空気感がリアルに感じられない世代、仕事をしていないか、遠すぎる仕事の人などが故かもしれません。
あの「許可の盥回し感」による「それどころじゃねえだろ」感は、生の体験があればあるほど焦燥感に駆られるものです。
話を戻しまして。
ほとんど脇目も振らずにストレートの剛速球で話が一本通っていつつも、要所要所にちょっとした贅肉をつけてくるといった構成なので、スピンオフがいくらでもできそうなのですよね。
市民側の視点で描いてみたらどうなるのか、とか、自衛隊の中をもう少し詳しく掘り下げてみると、とか、ジャーナリストにおいては、とかとか……このあたり、作品は二次創作で多段ロケットのように可能性が広がっていくという良い見本が、エヴァに続いてまたできうるのではないかと思わされました。
それなりに強烈なキャラクター達もいるので、一人一人に焦点を当てていくと、ドラマの描き方はいくらでもありそうです。
おすすめです
とまあ、いくつかネタバレを避けつつ、思ったことを書き連ねてみましたが。
おしまいにこれは言っておきたいです。
「リアルタイムでこの作品に出会えて幸せだった」と言える作品が、人生の中でどれだけあるでしょう?
そんなに数は多くないかもしれませんね。
そのような中で、本作、『シン・ゴジラ』は、間違いなくそのうちの一作として挙げられるものでした。
まだ観ていない方、あるいは、通常の2Dでしか観ていない方は、ぜひ、MX4Dで観られることをおすすめします。
製作スタッフ・関わられた方々全員に、感謝の意を伝えたいです。